膝枕
俺の知ってる兄さまは、いつでもどこでも気を抜かず、弟である自分に対しても本当に気を抜いた事はないのだろう。
それを知ったのは、城之内がうちに遊びにくるようになってから、しばらくたってからだった。

「・・・・・・・・・・・・」

その日は、珍しく兄さまの休日で、城之内もバイトがなくて、さらに自分も対した用のない日だった。
昼前にうちに来た城之内と暫くゲームで遊んで、それを兄さまが後ろで見てて、時たま城之内を馬鹿にするような発言をしたりして、そんな兄さまに牙をむく城之内を宥めたりして。別にいつもの通り、でもどこかみんなのんびりしてた日だった。
城之内とおやつを食べて、兄さまの分もいつも通り城之内が食べて、そしたら兄さまは何かを思い出したのか、少し席をはずしたんだ。その後を城之内が追って、二人の邪魔しちゃ駄目かなとか気使って一人でテレビゲームをしていたけれど、やっぱり一人じゃつまらないから、兄さまの部屋に訪ねに行ったんだ。
ノックをしたら、中から兄さまの声じゃなくて城之内の声で「どうぞ〜」って答えが返ってきた。
それをおかしいとも感じないで、ドアをあけたら。

「・・・・・・・・・何してんだ、城之内」

ソファに城之内が座ってて、その膝の上に兄さまの後頭部が見えた。
兄さまの頭を優しく撫でている城之内は、別段慌てることもなく。

「膝枕。」

と、さも当たり前かのように答えた。
ええ、まあ、その体勢が膝枕だというのは僕にもわかりましたがそれを兄さまと城之内でやっているということに疑問を抱いているのであって。いや、二人とも世間一般的にいうと恋人同士というものなのもわかってはいたのですがあの兄さまが城之内の膝で眠っているというのに驚きが隠せないわけで。

「・・・・・・邪魔したね」

と言って兄さまが起きないように静かにドアを閉めるしか俺には出来なかった。

兄の寝顔を数えるほどしか見ていない自分にとって、あんな風に他人の膝で自分が入ってきたのにも 気付かずにぐっすりと眠っている兄をみるのは、少し悔しい気持ちもあるが、嬉しい気持ちもあった。
やっと、兄は安息の場所を見つけることができたのだと。








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