幼い頃
昔、父にお前は泣き虫だと言われたことがあった。
確かに、その当時は何かにつけ泣いた記憶しか残っていない。
まだ、家族が3人だけだった頃だ。
優しい母に、頼りがいのある父。
二人とも大好きだった。
暫くして母に、瀬人に妹が弟が出来るよ、と言われた。
父には兄になるのだから泣き虫から卒業しなくてはな、と言われた。
自分の、弟か妹。
その時は想像できずにいた。
母のお腹が膨らみ始め、胎児が母のお腹を蹴った。
そうか、と自覚した。
自分が守らなくてはいけないものができる。
兄として、恥ずかしくないようにならなければ。
それから、泣くことは無くなった。






父と、母が死んだときも泣かなかった。







モクバが母を、父を求めて泣くのだ。
自分がしっかりしなければ。
モクバを、父と母の代わりに育てるのだから。
泣くなど、無駄なことだ。



城之内、お前は泣かないのか?








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