妹を持つ自分としては、やはり将来彼氏とかが出来て、会ってほしい人がいるの、とか言われて、
お前に妹は渡さない!とか言ってみたいものだ。
それを本田に言ったら「それは本来父親が言うものじゃないのか?」と呆れられたが、
あんなくそ親父にこそ静香はまかしてらんねえから、俺がやるしかないと新たに決意した。
もしかしたら、俺に彼女とかできて、もしかしたら結婚までにいくかもしれない時に、妹が
「お兄ちゃんは私だけのもの」とか駄々こねられたいな、とか夢見たり。
そんでもってこのことも本田に言ったら「それちょっと怪しい兄妹仲だぞ」と疑われたが、
可愛い妹を持つ身としてはそれは譲れないだろうと思う。
そう、そんなありきたりな兄と妹を望んでいたはずなのに。
なのに。
「海馬さんはお兄ちゃんを本当に幸せにできますか?」
「ふん、愚問だな、城之内の妹よ。俺以外にだれがこいつを幸せにできる。」
確かに、確かに妹は「お兄ちゃんは渡さない」みたいなことを言ってくれてる。
それで、俺の相手はそんな静香を宥めて俺との付き合いを認めてくれるように言ってる。
それも俺の想像の範囲内だ。俺も静香を一緒になって宥めて付き合いを認めてもらって
三人で仲良く〜見たいな展開になるのが俺の想像だ。
だが、今の状況は。
「浮気とかしたら絶対許さないですからね。お兄ちゃんを返してもらいますからね」
「返す気はないぞ。その心配は無用だ。」
なぜ俺は妹の斜め後ろで正座していて、頭を垂れているのだろう。
妹が海馬とにらみあっているのもなぜだ。
しかも位置的に俺が妹みたいだぞ。
俺が恥かしがっているうちに二人の話は終って、何故かお互い握手を交わしているのも
ちょっとなんだか、大分想像の域を越えてしまった。
静香は満足そうに頷いて俺のほうを振り返った。
「お兄ちゃん、海馬さんと幸せになってね。私応援するから!」
俺の両手を掴んで感極まって涙を流しそうな静香をみて、俺は意識を飛ばしそうになった。
俺の未来想像図はなんだか位置は違ってしまったが、叶えられることとなった。
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