身長差
自分の身長が恐らくこれからも伸びないだろうことは高2の時にわかった。
周りの友人たち、クラスメイトたいはぐんぐんと背を伸ばしていくのに、自分だけは何年も変わらぬままだ。
別に牛乳が嫌いなわけではない。
カルシウムも充分とったろうし、睡眠だって普通にとっている。
身体的なことは大体遺伝で決まってしまう。
僕の母はどちらかというと小柄だし、おじいちゃんなんてもっと小さい。
母は、僕がおじいちゃん似だと言う。
身長まで似てほしくはなかったなあ、と嘆いても仕方がないとはわかっているが。

「あ〜あ、せめて平均身長だったらなあ・・・」

放課後、皆が帰って静まりかえった教室で一人呟いた。
今日は日直だったのでいつも一緒に帰っている城之内くんたちには先に帰ってもらって職員室に日誌を届けにいっていた。
一人で帰るのは久しぶりだから、普段あまり考えないようにしていることが出てきたのだろう。
あーあ、と溜息をついて教室から出ようとしたら、丁度杏子がドアをあけて入ってきた。

「あれ?遊戯まだ残ってたの?」

「杏子こそ、まだ帰ってなかったの?」

忘れものしちゃって、とえへへと笑う杏子に僕は心が高鳴るのだ。
丁度いいから一緒に帰ろう、誘う杏子を断る理由もなく、むしろ喜んでその誘いに乗る。
二人で帰るのも久しぶりだね、と言うと、杏子は最近は城之内たちと一緒だもんね、と笑う。
杏子と並んで二人で帰るのはとても嬉しいことだが、同時に虚しくもなる。
二人の影を見て、僕はちょっと泣きそうになる。
僕と、杏子の身長差。
1センチや2センチならこんなには気にならなかっただろう。
きっと、このことを杏子に言えば、杏は気にすることはないと、男は外見じゃあないでしょう、と言ってくれるだろう。
だけど、僕だって男なのだ。
好きな女の子より、大分身長が低いことはかなり虚しいし、悔しい。
もう一人の僕は、僕のそんな悩みを理解はしてくれないだろう。
彼は外見などまったく気にさせないほどの魅力を持っているから。
だけど、僕はどうだろう。
僕は。










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