痴話喧嘩
喧嘩というものは些細なものほど発展しやすい。
目の前の二人は特に発展のスピードが速い。
先ほどまで穏やかに話していたはずなのにいまではお互い射殺さんばかりの視線で睨みあっている。
「ねえ、喧嘩の原因誰かわかる?」

僕の隣で卵焼きを食べていた杏子が今まさに戦争を起こしそうな二人を横目に尋ねた。

「確かー・・箸の持ち方だっけか?」

「違うよー味噌汁は赤味噌か白味噌か、だよー」

最初に本田君が、次に獏良君が答えた。
確かにどちらも先ほど話題に出てきたものだ。
でも、僕にはどちらが原因なのか、その二つのうちどちらかが原因なのかがわからない。
それは他の皆も同様で。
はあ、と杏子が溜息をついて、ブロッコリーへと箸をのばす。

「毎回毎回よく喧嘩できるネタがあるわね〜、私もう飽きちゃった」

「でも、城之内君大丈夫かなあ・・怪我とかしないかな?」

僕が心配そうに二人のほうを見れば、既にお互い手が出ていてちょっとしたストリートファイトみたいだ。

「お、城之内上着脱いだのか。本気出してんなー。」

本田君いわく、城之内君はかなり喧嘩が強い。それは僕にもわかるけど、そう言ったら本田君は少し遠い目をして

「いや、お前等はあいつのブちぎれた真の姿をしらねえから・・」と呟いた。

そんなに荒れてたのかな?昔の城之内君・・。

「でもさ〜、海馬くん見た感じインテリっぽいから喧嘩とか弱そうだよねー。体力もなさそうに見えるのにー」

「ああ、それは私も思った。お坊ちゃまだから喧嘩は護衛の人まかせかな〜って。」

「ま、あれみりゃ喧嘩の強さ、わかるわな・・」

城之内くんはとても強い。だけど、海馬君はそんな城之内くんに同等に対抗しているのだ。
だから、海馬くんも喧嘩は強いのだろう。

「でも喧嘩するほど仲がいいっていうしね〜」

「あいつらのは喧嘩つーより愛情確認みたいなものだからなー」

口にプチトマトを入れてもう一度格闘していた二人をみると、話あいへと落ち着いていた。

「あ、喧嘩終ったみたいだよ」

僕がそう言っても今度は誰も二人のほうを見ようとはせず、杏子は僕の頭を二人とは反対側へと向けた。

「ここからは見ないほうがいいわね」

なんでと聞くほど僕も鈍くはない。
つまりは、そういう喧嘩なんだろう。










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