勇者の望み
勇者と呼ばれた男の供をして、はや数ヶ月。
伝説の勇者が現れたと騒がれて、やりたくもない化け物退治を引き受けてしまったこの男を放っておけなくて、
なんとなしに、一緒に旅をするようになっていた。
お日様のような髪を持つ勇者は、人の良さそうな笑顔を顔に貼り付け、泣きながら、謝りながら化け物を退治していく。

ごめんね、ごめんね、ごめんね。

声には出さないが、その魂の叫びが供に戦ってから聞こえるようになった。
なんと、弱くて強い生き物だろう。
初めて見たときから興味を持った。
恋心のような、この思い。
しかし、勇者にそのような関係を迫ることは出来なかった。
そんなことを言ったら、この男は「君の好きなように」とか言って身体を差し出すだろう。
綺麗で、酷いこの男は。

「いつまで、こん旅続ける気や?」

「みんなが、望むまで」

おどれの望みは、どうなんや。

敵のボスが、勇者の兄と知って、無性に馬鹿らしくなった。
世界を巻き込んだ兄弟喧嘩か、と呆れたものだ。
色んな街に行き、勇者と歓迎され、次第に畏怖されていく。
『我々とは違う』
『人ではない』
『化け物を殺す化け物』
『同族殺し』
『恐ろしい』
酷い言われようやな。

一緒に、旅を続けてく。












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