桜並木 V
最近、あの桜並木で見かける。


ふと、立ち寄った懐かしい街。
昔の通学路を思い出して、歩いていたら、昔のままの桜をみつけた。
なつかしいなあ、と思って、見上げていたら、かなりのスピードで駆けてくる音。
そういや、学校の通学路やった、と思い出して目だけで、音の主を見た。
スポーツバッグを肩から提げて、走り抜けていく金色の髪。
元気やな。
次の日も、なんとなしに、同じ場所に、同じ時間にいると、また聞こえてくる。
走り抜ける瞬間、顔を見た。
また、明日もいるやろか。
気が付くと、まるで日課のようにこの場所に、この時間に立っていた。
蕾すら無かった桜の木が、もう少しで咲きそうだ。
こちらから、声をかけることもできず、ただ、走り抜ける瞬間を待ち望んでいた。
情けない、と自分に言ってみて、また会いたい、と願う。
明日、またいつもの時間に、あの並木で見かけたら。
もう、この街に来るのは止めよう。
桜が、咲くのを待って、この街をでよう。
桜、咲いてへんとええな。
見事な咲きっぷりに、苦笑する。
これが最後かと、桜を見上げて、耳だけを澄ます。
しかし、自分の近くで、立ち止まる音。

「桜が好きなんですか?」

そういや、声聞くのはじめてやな。

「じぶん、桜好きか?」












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