心に傷を負った少年が、体中が傷だらけの青年に出会いました。
少年は、青年に言いました。
「なして、そない傷だらけなん?」
青年は、少年に言いました。
「僕は見た目よりずっと長生きしてるから」
少年は、それが答えなのかと思いました。
青年も、少年に言いました。
「どうして心に傷を負ったの?」
少年も、青年に言いました。
「まだ生きてるからや」
青年も、それが答えなのかと思いました。
少年も、青年も、そこから動きませんでした。
しかし、少年は青年よりも一歩前に出ました。
青年は少年の後姿を見詰めるだけです。
少年は歩き続け、ふと、青年を振り返りました。
「なんであるかんのや?」
青年は優しい笑みを浮かべて言いました。
「僕はここから動けないから」
少年は左の眉を上げて言いました。
「動かへんだけやろ。こっちまできてみ」
青年は、戸惑いました。
「無理だよ、僕は君とは違うから」
少年は笑いました。
「当たり前やん。同じやったらきしょいわ」
青年は驚きました。
「違うのは気色悪くないの?」
少年は吹き出して笑いました。
「ええから、こっちきてみ」
青年は一歩、また一歩と足を踏み出しました。
少年の横に並んで、青年は少年が既に少年ではないことを知りました。
「できるやん」
赤い服を着た青年は、黒い服を着た青年の横で、綺麗に笑いました。
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