無題
この牢に入れられて、どのくらいたったのだろう。
抵抗の繰り返しで、身体の所々に怪我をした。
既に傷だらけの身体だ、さほど気にはならない。
でも、あの男の言葉を思い出してならない。

「ほんま、傷だらけやなあ」

「なんだよ、男の裸みて楽しいか?」

「いや、見たくもないけどな。けど、ここまで傷だらけやと逆に関心するで」

「関心?」

「ようここまで生きてこれたなて」

身体の事を言ったのかもしれない。
普通だったら、そうだと思う。
だけど、あの男は心の奥深くをついてくる嫌な奴。

タダでさえ心に傷を負いやすい奴がこんなになるまで傷つけられてよう壊れなかったな

そうやって、無言で僕に話かけてくる。
聞き取れてしまう自分にも呆れるが。
そうだな、と少し微笑みを作って返事を返すと、ウルフウッドはいきなり不機嫌になった。
僕が、笑みを作るとこいつは嫌な顔をする。
わいの前ではそな顔すんな、とかなんとか言われたけど、もう癖になっているからやめられない。

「あ、服着んのちょいまち」

もう、この話題は終わり、という気持ちで服を羽織ろうとしたら、止められた。
今度は、こっちが不機嫌な顔を浮かべる番だ。
一体なんだというのだ。

「んー・・・・、」

首を傾げ、眉を寄せて何か考えるように顎に手をやる牧師は、立ち上がってこちらい歩いてきた。
そしていきなり、前置きも何もなしに、ぺたぺたと、僕の身体を触り始めた。

「うはあ!あにすんだよ!」

考えてもいなかった行為に驚き、なんとか逃れようとするが、牧師はまあまあ、と腰に手をやり自分の方へと引き寄せた。
それさらに自分を驚かせる結果になり、思わず反射的に牧師の黒い頭を叩いてしまった。
あ、と声をあげる間もなく、あにすんじゃぼけえ!と近距離で叫ばれ、耳を塞ぐ。
ごめんと、謝りそうになる自分を叱咤し、そっちが悪いんだろ!と反論するがむなしく。
今度は脇腹をゆっくりと、優しくなで始めた。

「ぎゃあ!!」

「なんやー、色気なー。もちっと雰囲気だせ。」

「ふ、雰囲気って、何のお?!」

「えっちい雰囲気」

へ?
と呆然自失になっている間に牧師は不埒な手の動きをやめず。

「ちょ、いきなりなんだよ!なんなんだよ!ほんと!まじで!」

「やー、なんか肌白ーとか思て、触ってみたら以外に手触り良かったさかい、なんかムラムラしてきた」

「お前脈略ないし突飛すぎだ!つかムラムラ?!」

ちょっとまてと、先程までの二人の関係というものを思い出してみる。
ただの旅連れ世は情け、じゃなくて、別にそんな関係じゃなかったはずだ。

「俺、男だぞ!男!お前も男!」

「当たり前やン。まあ、これも経験の一ついうことで・・・」

「ちゃうやろー!」




その後、話を聞いたら本当に突然ムラムラときたらしい。
それで行動を起こしてしまうのだから。
まあ、気持ち良かったし。
好きだとか言ってくれるようになったし。
ずるずると。
なんか、僕の身体、特に肌触りを気に入ってるみたいだからなー。
あんまり傷作っておかないほうがいいのかなー。
そろそろ疲れたし。
あー、はやくこっから出てウルフウッドに会いたいな。
なんて思ってしまっているある日の昼下がり。














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