中学の頃、二人で落ち着ける場所と言ったら屋上だった。
悪い噂ばかりが先行して、おいてけぼりをくらった一護とチャドは、休み時間になるといつも屋上にいた。
普段は立ち入り禁止で、鍵がかかっているのだが、チャドがふざけてひっぱったら壊れてしまった。
それ以来、屋上は二人の避難場所。
試験前にはノートと教科書を広げて、どこが出るかヤマ当てをして。
夏になりかけのこの季節は、陽射しさを避けて日陰にいれば、結構過ごし易い季節で。
二人であーでもない、こーでもないと、下らない話ばかりして時間を潰す。
今日は数学の小テストがあって、一護は昨日徹夜で勉強したのか、朝から眠そうだった。
その分、出来はよかったのか、機嫌はよかった。
昼休み、いつものように屋上にくると、一護は直ぐに横になった。
「ちょっと寝る」
一言、聞き取りづらい小さな声でそう言って、すぐに寝息が聞こえてきた。
寝つきいいなあ、とぼんやりと友人の寝顔を見詰める。
眉間の皺の跡。指で伸ばしてみたいけど、それをしたらきっと一護は起きてしまう。
いつもは大人びた表情を浮かべる顔も、今は年相応に見える。
顔の作りからして、老けてみえる自分とは違うなあ、と無意識に伸びた腕に驚く。
触ったら、一護は起きてしまう。だけど、さわってみたい。
うずうずとする腕に負けて、少しだけ、そっと、チャドは一護の眉間に指を這わした。
一護は起きない。
ほっと、溜息を吐いて、調子にのって今度は頬に手を添えてみる。
柔らかい。気持いいなあ。
楽しくなって、今度は半袖のシャツから覗く二の腕に触れてみた。
細い。こんな腕で、喧嘩してるのか、と驚く。
「・・・・・何してんだ?」
「・・・・・すまん」
不機嫌そうな声と、ブラウンの瞳で睨まれて、チャドはすごすごと腕を引っ込めた。
そっと触れた指先が熱く感じた。
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