1、ぎゅっ!
大きな体を、必要以上に小さく丸めて、チャドは小さな声で一護に話かけてくる。
一護は、決して、背が低いというわけではない。チャドが大きすぎるのだ。
高校一年生で、その体格はありえないだろうと思いながら、羨ましいとも思う。
こんなに大きかったら。こんなに力があったら。こんなに。こんなに。

「一護は凄いな」

「え?」

「凄い」

黒い髪に隠れた目から、にこにこと笑顔が零れると、とても可愛い顔になるチャドは、
よく主語を抜かして会話する。今も、一体何が凄いのか、詳しいことは言わないのに、
にこにこと、嬉しそうに、本当に一護を凄いと思っている顔で笑うんだ。
チャドのほうが喧嘩は強いし勉強もできるし体も大きいし顔も整っていて格好いいと思うし。
だけど、にこにこと、一護を凄いといって笑うのだ。
大きな体を丸めて、一護が話し掛け易いような体勢で、大きな声で人を威嚇しないように
喋って。たまらなくなって、大きな体に抱きついた。
腕がまわらない。大きな、男らしい体。慌てた様子のチャドにかまわずに、ぎゅっと、抱きつく。
この感情の昂ぶりはなんだろうと、頭で思うけどこうやって、チャドに抱きついていると気持がいい。

「お前のほうが、すげーよ」

一護よりも頭がよくて、一護よりも喧嘩が強くて、誰よりも優しくて、大きくて。
だけど、一護を凄いと笑顔で言うんだ。

「お前のが、すげーよ」

ほんとすげーんだよ、ばか。




困った様子のチャドが可愛く見えてしまう自分は結構重症なんだ。






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