甘い話2
注:このお話には性的表現がありますぜ!






















少しばかり、緊張しながら渡したプレゼントはどうやら浦原に気に入られたらしく、早速今まで使っていたものたちと交換された。安堵の息を吐きながら、一護が上げたジッポを何度もかちりかちりと開閉している浦原を見る。浦原は、いつもジッポを持ち歩いていた。だから、ジッポを取り出す度に一護の事を思い出して欲しいと思って、それにした。灰皿は、ただ単に片付けようとしない浦原がいつも煙草で灰皿を一杯にするからだ。
ありがとうと言ってくれる浦原が、本当に好きだと思った。だから、今日、もし一緒に寝る事になったらその時に熱と一緒に言ってやろうと思った。誕生日なんだから、いつも浦原が一護に揺すってくる言葉くらい、言ってやろうと。
お腹も一杯になって、テレビを見ながら他愛のない話をして。ふとした沈黙に、あ、と思う間もなくキスをされた。ソファに座っている浦原と、カーペットに直接座っている一護とでは距離があるから、浦原は一護に覆い被さるように、一護は受けやすいように少しばかり身体を浮かせた。顔を上に向かされ、降ってくるキスを受けた。顎を固定され、顔を反らす事ができす、深くなっていくキスにただ翻弄された。咥内を蹂躙していた舌が離れていき、はあ、と吐息と一緒に唾液が一筋顎を垂れた。急に気恥ずかしさが込上げてきて、慌てて服の袖口で拭った。頭上で、浦原が笑った気配を感じて、あんだよと睨みつけると、ふふと笑いながら一護サンDVDでも見ましょうかと言ってきた。
「DVD?」
こんな時に?
一護はてっきり、このまま…と思っていたから、浦原のその申し出に思わず不満げな声が出てしまった。これではまるで期待していたようで。違うからな、と食いつく前に浦原はがさりと鞄から一枚のディスクを取り出した。
「いえね、今日知り合いの方から頂きまして」
「映画?」
「見てからのお楽しみ」
「なんだよそれ」
これからするだろう行為に身構えていた一護は、肩透かしを食らったようでなんだと思ったが、意識は直に目の前でちらつかされるDVDへと向いていた。じらされれば、気になる、というもの。ディスクをセットして、浦原が一護を足の間に入れるように、一緒にカーペットに座ったのには驚いたが、再生され始めたそれに、さらに驚く事となった。
大き目のテレビに映ったのは、なんの変哲もない部屋。大きなベッドが置かれている以外、何の家具も置かれていないその部屋に、一護は見覚えてあった。忘れたくても、忘れられるわけがない、記憶。そのベッドに座っているのは、紛れもなく。
「う、浦原…っ!」
見覚えのありすぎる制服に、オレンジ頭。その横に座っているスーツに草臥れた髪の。
「あの部屋…覚えてる?」
「これ…!」
画面の中で固く座っている自分の姿に、あの時の心情が湧き上がってくる。相手だと、紹介された男の顔がしっかり見れなくて、力の入りすぎて白くなってる自分の拳しを親の仇みたいに睨みつけてた。それで。
一護サン、と耳元で吐息と一緒に囁かれた名前に、びくり、と画面の中の自分と同じように固くなる。耳朶を、唇が這う。
「あそこねぇ、カメラ設置されてるんスよ…アタシも忘れてたけど、この間久し振りに事務所に行ったら…」
「っ、」
「あの時いたスタッフ…彼が見つけて保管しててくれたみたい」
後ろから腹に回された手が、シャツの中へと入ってくる。指の感触に驚いて、画面に釘付けだった視線をやっと浦原へと合わせられた。目を見開いて、何か口にしようとするが、あまりの出来事に声が出てこない。驚いた?と楽しそうに笑う浦原に、やっと感情が追いついた。けど。
「おま、何考えて…!え、これ、」
理解の追いついていない頭で今の、目の前にある現状が認識できず、結局は意味の無い言葉を羅列するだけで。してやったり、と満足げな笑みを浮かべた浦原は、真赤を通り越して真っ青になりつつある一護のこめかみに、聞かせるみたいなキスをしてほらと、画面を指差した。思わずつられて顔を向けた画面を見て、一護はがつりと頭を殴られたような衝撃を受けた。ベッドの上がよく見えるように、斜め上から映し出されている映像には、スーツを着た男に押し倒されている自分の姿が。
暴れる事も忘れて、浦原の腕の中、石のように固まった。シャツの中に潜りこんできた手はそのまま不埒な動きをするから、時折ひくりと反応を返す以外、一護は動けなかった。
そんな一護を、浦原は後ろから唇や指でちょっかいを出しながら観察した。画面に凝視している顔が、段々と赤くなっていってるのは、今がどういった状況なのか、遅まきながらようやっと気がついているのだろう。いつもの彼なら、こんな行為を甘んじて受けるはずはなく。喧嘩っ早い恋人は手が出るのも足が出るのも早い。こうした色事に関する経験が皆無の一護は、浦原のすることなす事に真赤になって、最初は酷く怒って、少し暴れて、浦原を殴った手で縋ってくるのだ。最近は、こうした浦原の欲に慣れてはきたが、今回は刺激が強すぎたらしい。無防備に晒されている首筋を唇で辿り、先ほどから一護の意識を奪っている画面へと、目を向けた。
ベッドに押し倒されて、上着を胸元まで捲られ、胸の尖りを舐められている一護の姿を見て、シャツに忍ばせた指を同じように胸の尖りに掠めてみせた。びくんと跳ねる体を後ろから覆うように押さえつけ、髪の生え際に軽く歯を立てた。
はあ、と熱の篭った吐息が零れる。

DVDを受け取った時、浦原は渡してきたスタッフにこれをどうしたのかと詰め寄った。何度か共に仕事をしている男であったが、こうした業界、自分の知らぬ処で撮られたものが出回るなんてことはざらだった。浦原の危惧に気づいた男はすぐさま自分以外は見ていない事を主張した。見たのかとさらに温度を下げた浦原に男は怯えながらも、設置されたカメラだけで撮影されたものでは売り物にならないと言ってきた。それに、この男はどうやら浦原があのオレンジ頭の高校生と仲が良い、という事を知っていたらしく、使えないなと自分のデスクに仕舞いこんでいたとの事。それが先日、大掃除の際に見つかり、更には浦原の誕生日も近いという事でこうして浦原に渡したらしい。
視聴室を借りて一通り見てみたが、確かに売り物にするには弱い映像だと思った。これを見て興奮するのはきっと自分と一護だけだろうなと思った所で、浦原は初めて、このプレゼントを喜んだ。

予想以上に過敏に反応を返す一護にくつりと笑みを浮かべ、時折テレビから聞こえてくる一護の声と、今浦原の腕の中でいつもより極まった感な声を洩らす一護とで浦原は楽しんだ。
胸ばかりを弄って、下を掠りもしようとしない浦原に焦れたのか、は、はと荒い呼吸の合間にうらはら、と切羽詰まった声が混じる。
「どうして欲しい?」
口を耳につけ、直接語りかければ、んん、とか細い声。画面の中では、浦原の下で一護が高い声を上げていた。綺麗についた腹筋の筋をなぞれば、一護は小さな声で触ってと懇願した。堕ちるのも早いなと自分の予想以上に感じている一護に込上げてくる感情は、自分には似つかわしくない、ストレートなもので。雫を堪えた目を見ていたら、口に出してしまいそうな想いに気づかぬふりをして、反応を示し始めている一護へと手を伸ばした。
「ぁ…っ」
微かに洩らした声に交じる色。その声が聞きたくて、いつも快楽を耐える恋人の箍を外してみたくて、このDVDを快く貰ってきたのだ。きっと、行為の後彼は怒り狂うだろう。それでも、今この時に。自分の腕の中にいる時には、少年らしい硬質さを剥ぎ取ってやりたかった。
服の上から揉みこむように触れば、その柔らかな刺激に物足りなくなったのだろう、腕に添えられた手に力が込められた。くすりと耳元で笑い、チャックを外して下着の中へと指を忍び込ませれば、ぬちゃりと粘着質な感触。
「一護サン…ねぇ、もっと言ってくださいよ…?」
「ん、あ…ぁ、なに…」
「触って欲しいって…舐めて欲しいって。…気持ち良くシテ、って」
ひゅ、と息を呑む一護の顎を掴んで、画面から動けずにいた視線をこちら側に向けさせた。目尻を赤く染め、与えられる快楽に流されまいといつもよりも深くなった眉間の皺をなぞるように舌を這わす。伏せた睫の端が、目に溜まった雫を光らせた。はあ、と細やかに吐き出される吐息とは別に、戸惑いを交えた一護の嬌声がテレビから流れる。堪えられない、とばかりに下唇を噛むその表情に首筋からぶわりと何かが湧き上がった。
衝動に逆らう事なく口付け、奥まで貪った。暖かで柔らかい舌を吸い、指先を絡める動きから快楽を引き出すものへと変えた。あぁと顔を仰け反らせ、呆気なく一護は果てた。













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