さらさらと、髪の毛を梳く指が動く。
くったりと横になった一護の枕もとに胡坐をかいて座った男は、先ほどからずっとその動作を繰り返している。一護も特に止めようとはしない。
さらさら、さらさら。
髪を梳く指にあわせて、外にある笹が音をたてる。
テッサイさんが用意した、短冊が吊るされた笹。
織姫と彦星が、年に一度だけ、出会える日。逢瀬の日。
それは、悲恋なのだろうか、それとも幸せな事なのだろうか。
浦原は言う。
「毎日会ってたら冷めちゃうような仲でも、年に一回だけだったら、長く続くんじゃないっすか」
一護は問う。
「俺、毎日ここにきてるけど、お前冷めてんの?」
浦原はからからと笑って物騒な瞳でひたと一護を見詰め。
「アタシと一護さんの仲は毎日会っても冷めることなくずっと燃え滾ってるんです。」
なんだそれと、男の瞳から視線を反らして一護はわざとらしく吐き捨てるように言う。指に男の骨ばった手が重なる。浦原の口元に持っていかれ、誓いのように口付けをされ。
「アタシは一年に一度だなんて、大人しく真面目に待つ気はありません。」
放さないで、傍に。離れろという無粋な人は切り捨ててあげましょう。優しい声音で、暗い瞳で浦原は一護を囲い込んだ。
「俺も、」
行為の間、一言も言葉を発さなかった口から、ポツリと呟きが漏れる。
「俺も、一年に一度なんて、大人しく待ってられねえ」
きっと、絶対、あんたに会いたくてたまんなくなるから。
「・・織姫も彦星も、アタシ達には理解できない人達って事ですねえ」
「まあ、御伽噺だしな」
「あら、夢のない」
短冊には随分と可愛らしいことを書いていたのに、と男がふふふと笑えば、オレンジ頭の少年は、うるさいと不貞腐れてタオルケットに隠れてしまう。男は更に笑って、アタシ達の間にある障害は川じゃなくて薄い布1枚ですねえ、とタオルケットを子供から取りあげた。
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