食って掛かる声や、恥ずかしそうに述べる感謝の声や、嫌そうな呆れ声や、穏やかな声や。一番最初に惹かれたのはこちらを食い殺すような勢いの、びりびりと響くような声。空気を震わせるほどの声に込めた霊気に震える体は恐怖などでなく、歓喜だった。
自分はそう変わった性癖を持っているわけでもなかったが、刃をぶつけ合うたびに飛び込んでくる鋭い目や、殺気に男の欲が刺激された。真っ直ぐで、明るい、まっさらなこの子供を屈服させる事ができたら、どんなに楽しいだろう。
あの目が、恐れを、怯えを映す様を想像するだけで笑いが込み上げてくる。
若い、雄鹿のようなしなやかな筋肉に、少年特有の硬質な雰囲気を纏う体を、縫い付ける様に床に押さえ込んで、思うがまま貪る事ができたら。簡単に掴めてしまう細い手首を、痕を残すほど強く掴んで、黒いカラスのような死神の衣装を、破るように剥ぎ、傷だらけの体を露にし、そして。出刃包丁のような形をした斬魂刀を、軽く受け流し、体のバランスを崩して倒れこむ少年にたくさんの血を浴びてきた紅姫の切っ先を突きつける。目の前の、悔しそうに睨み返してくるオレンジ頭の少年は、自分がそんな妄想をしていることなんて露にも思ってはいないだろう。
痛みに歪む顔を見る度に、快感を耐える顔を想像する。袴の裾が捲れる度に、あの足はどのように揺らめくのかと想像する。何度、倒れた少年を見る度にそのまま襲ってしまおうかと考えたことか。そんな事をしたら、子供は二度と寄り付かなくなる。だから焦ってはいけない。じわり、じわりと近づいて、浸透させて、気を許すまで持っていって。突然自分を引き倒し、表情を一変させる自分に、あの少年はどんな驚きの表情をしてくれるだろう。
きっと、戸惑い、悲しみ、怒りを浮かべてくれる。
嗚呼、想像するだけで楽しくて。
剣を合わせ、呼吸を合わせ、子供に合わせ。
ゆっくりと蝕んでいく。
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