Death and emerging
「君、本当に東仙要の子供?」
何だコイツ。狛村に何も聞かされていないわけではないだろうに、何を今更、と思った。
「…血の繋がりはねえよ」
「知ってるよ。…なあんだ、がっかり。あの東仙が養子にしたくらいだから、どんな期待の新人なのかと思ったのに…」
期待ハズレだなぁ。
瞬間、目の前が真赤になった。飛び掛るように相手の胸倉を掴み、ぶつかるように、壁に押し付けた。沸騰した、と思った。怒りも苦しみも不安も悲しみも、全部。
「アンタなんかに…!アンタに何がわかるんだ!」
決壊して溢れた言葉の意味なんて考えもせず、冷めた目でこちらを見下ろす男に浴びせ掛けるように怒鳴り散らした。唸るみたいに、何も考えずに口を開く。
「要が病気だった事も養子の事も俺は何も知らなかった!いつも…!いつももう全部終った時に俺は知るんだ!なんでだよ!なんでもっとはやく俺に言ってくれないんだどうしてずっと、」
気づいたら、ぐわん、と景色が回り、天井と浦原の顔を視界に入れた後に背中と頭に遅れて衝撃が襲った。息が止まる。
「甘ったれないでくれます?」
「ぐ…っ」
「ほんとにがっかりだ」
今度は逆に、一護が首を押さえつけられ、床に押し倒された。咳き込む一護に構うことなく、浦原は起き上がれないよう、腹に膝を乗り上げてきた。ぐ、と唸る一護を、碧の目が嘲るように見下す。
「あの東仙に育てられたんだ、楽しみにしてたんスよ?どうやって苛めてやろうかなぁって。なのに、なに君?全然普通の餓鬼じゃないっスか。面白くもなんともない…。きゃんきゃん喚くの、止めてくれません?耳障り」
なんとか引き剥がそうと男の腕を掴むが、首を掴まれた体勢は苦しく、ただもがくだけしかできない。痛みと、苦しみで生理的な涙が目尻に溜まる。そして何より、今まで一護が見たことが無いくらい、男の目が冷たくて。
浦原の言葉に反論したい。だけど、呼吸さえままならないこの体勢ではキツく、それに浦原の言葉はきっと言った本人の予想以上に鋭く一護に突き刺さった。







(続きは『Death and emerging』に収録)





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