それだけの話
隣に腰を下ろしただけで少年の体は強張った。
少し動くだけで鳴るベッドにさえ怯えるように、恐る恐る、浦原から距離を取るように座る位置をずらす。
そんなんでよくこんなとこに来た。はぁ、とわざとらしく溜め息を吐けばちらちらとこちらを伺う気配。
おもしろいかもしれない。
わざと逸らしていた視線を舐めるように絡めれば、強く噛まれた唇が震えた。
これは、また。ソソル顔だ。

「キミ、今からナニするかわかってるの?」

そんなガチガチで出来るの?緩んだネクタイに指を差し込み、これ見よがしに解いてみせる。
自分が、目の前の男と何をしようとしているのか。やっと理解したのか、顔が蒼白に変わった。
ぷつりとシャツの釦を片手で外し、此方に顔を向けないように、膝に置かれた自分の手をじっと見つめている少年にもう片方の手を伸ばす。
指先に馴染むきめ細かな頬の感触を確かめるようになぞれば。
不憫な程少年の体は強張った。本人にとっては、かなり大変な事態なのだろうけど。
浦原は堪えきれず。ぐふ、と可笑しな音を発して笑い出し た。






(続きは『それだけの話』に収録)





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